「新卒でスーパーに入社しても辞める人が多いって本当なのかな?」
「スーパーって入社3年以内の離職率が高いっていうけどそうなの?」
はい!本当です。
新卒 3年以内の離職率は全体平均で「32.0%」なのに対し、小売業の3年以内離職率は「36.7%」
平均より「4.7%」も3年以内離職率が高いことが分かります。
私は40年前に東証一部上場のスーパーに入社しました。
その時は大量入社で、男子社員130名、女子社員250名、合計380名が入社です。
同期で同じ店舗に配属された男子社員は11名でしたが、定年まで残ったのは6名ですから半数は辞めていったことになります。
私が大型店の店長になって、初めて受け入れた新入社員は4名。
早稲田、神戸大、関大、広島大と結構な高学歴社員ばかりでしたが、入社して2年で早稲田と神戸大の男子社員は退職してしまいました。
スーパーマーケットを辞める理由は様々です。
「給料が安い」「仕事がきつい」「残業が多い」etc
色々な理由がありますが、本当に事実でしょうか?
本当にスーパーは働きにくい職場なんでしょうか?
答えは、「半分は正しいけど、半分は間違っている」です。
この記事では「スーパーを辞める理由10選」に関してスーパー歴38年、店長歴12年の私が詳しく解説していきます。
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まずは、金銭的な理由。「給料が安い」というのは本当でしょうか?
①スーパーを辞めたい理由 給料が安い
「スーパーって他の仕事に比べて給料安すぎる」
「こんな給料で将来結婚して子供育てられるのかな?」
本当にそうですか???
2022年度のスーパー社員の平均年収は「360万円」。
全体の平均年収は「403万円」ですから全体よりは確かに低いことが分かります。
ただ、全体の平均年収の中央値が「350万円」ですから、それほど低いことはないですよね。
面白いのは、従業員数が多い企業(大きいスーパー)も少ない企業(小さいスーパー)も平均年収は「10万円」程度しか変わらないということ。
あと、スーパー(GMSと呼ばれる総合スーパーを除く)は食品をメインに扱っているので景気の波の影響をほとんど受けません。
だって、「景気悪いから食品を買わないでおこう」とはなりませんから。
だから、「不景気だからボーナスなし」とか「ボーナス現物支給」とかもないので、家のローンも安心して組めます。
下表は私の年齢と役職と年収の推移です。
年齢 | 役職 | 年収 |
---|---|---|
20歳前半 | 新入社員~チーフ | 300万円~350万円 |
20歳後半 | チーフ | 350万円~400万円 |
30歳前半 | チーフ~副店長 | 500万円~550万円 |
30歳後半 | 副店長~バイヤー | 600万円~650万円 |
40歳前半 | バイヤー | 650万円~700万円 |
40歳後半 | 小型店店長 | 700万円~800万円 |
50歳前半 | 中型店店長 | 800万円~850万円 |
50歳後半 | 大型店店長 | 850万円~900万円 |
高いとは言えませんが、低くもないですよね。
私の場合、妻もフルで働いていたこともありますが、一戸建てのマイホームを建てて、子供三人を大学卒業させてますので、ぜいたくはできませんがそれなりに生活できる給料ですね。
- 給料が安くて結婚できないというのは「ウソ」 十分生活できるレベルの給料
スーパーは人手不足で人が足りずに、仕事が終わらないと言われますが、本当でしょうか?
②スーパーを辞めたい理由 人手不足で仕事が多い
「人手が足りなくて、仕事が終わらないよ。早く人員を補充してほしい」
「また、アルバイト休みかよ」
人手不足は本当です。
私が店長の時も店舗の人員が充足されたことは一度も無かった。
常に求人を出してましたね。
応募が来てもこちらが欲しい売場に応募は無く、「品物を出すだけの仕事がしたい」「接客しない売場で働きたい」という人が多かったですね。
こちらが欲しい「生鮮売場」「惣菜売場」「食品レジ」への応募は本当に少なかった。
「水産売場」や「食品レジ」なんて働きやすいのに、イメージが悪いんでしょう。
自分の仕事をしていても、お客さんから色々聞かれると、自分の手を止めてお客さんの対応をしますから、自分の仕事がどうしても後回しになります。
結局はそれで仕事が終わらないということもあります。
最近の学生アルバイトは昔に比べて「お金への執着心」が無いのか、どん欲にアルバイトに入ることはしないですね。
本当の自分の空き時間だけ働くという感じですから、スーパーの繁忙日のクリスマスなんてアルバイト「0」で年寄りばかりが店勤務ということもあります。
また、最近は簡単に休む学生バイトも多く、そのしわ寄せが正社員に来ます。
あと、本部からのくだらない仕事も多いです。
誰も見ない「販売計画書」、本部の偉いさんたちのための「報告書」など。
本部の人員が増えるたびに、店舗のくだらない仕事は増えていきます。
本部の人員を減らして、くだらない仕事を減らせばもっと仕事は減るのになと思います。
- 人手不足は本当だけど、仕事のやり方やくだらない仕事を削減すれば時間は作れる ということで「半分 本当 半分 ウソ」
次は私には切実な問題。休みが取れないという理由です。
③スーパーを辞めたい理由 人が休む時に休めない
「たまには一週間くらい休んで海外旅行でもいきたいな」
「今度の年末年始は家族で温泉でもいきたい」
これはスーパーで働いている以上は無理ですね。
「そんなこと、スーパーで働くんだから当たり前だろ!」
「就職する前に分かってるだろ!」
確かにその通りです。
覚悟を決めてスーパーに就職したのですから、覚悟が甘かったと言われても仕方ありません。
でも、独身で考えているのと結婚して子供が出来てからの考えはやっぱり違います。
そう、子供の休みや子供の学校行事の日は「スーパーの繁忙日」とほぼ重なるんです。
これが数年だけなら我慢もできますが、スーパーで働いている限り永遠に続くとなると我慢できなくなるのです。
経験者から言わせてもらうと、この理由がいちばんきついです。
まず、連休ですが連休は希望すれば取得できます。
ただ、週休2日制として一週間で連休を取得すると「5勤2休」となります。
スーパーの勤務を時間中ほぼ立ち仕事です。さらに荷物を運んだりする肉体労働が多いので肉体的な疲労は大きく、5日間連続で出勤はかなり疲れます。
それでもいいのであれば連休の取得は可能です。
土日の休日取得は店によります。
店舗によっては大型店で「サンデーストア」と呼ばれ、週末に大きな集客がある店舗は休みにくい。
逆に平日中心の店舗で週末のほうが逆にお客さんの少ない店舗もあり、そういう店舗は土日の方が休めますが、主婦であるパートさんを優先的に休ませることが多いです。
「年末年始」「盆」「ゴールデンウイーク」も店によります。
年末年始ですが、年末に関してはどの店舗も最大の繁忙日ですので12月29日~31日はほぼ休めません。
年始は大型店以外、特に小型店はそれほど忙しくないので希望すれば休めます。
お盆は地域差があります。お盆に帰省される方が多い地域の店舗は忙しいので8月13日~15日は休めません。
逆にお盆に人が流出する地域の店舗は休みやすいです。
長期休暇はシフト制のため休めても4連休くらいが限度です。
例えば社員2名体制の売場であれば、一人が連休すればもう一人が連続出勤となるので無理すれば5連続出勤可能ですが、きついのは事実です。
大手でも「長期休暇を交代で取得可能」といって連休の日数を設定している企業もありますが、ほぼ取れないと思って間違いありません。
- これは「本当」 精神的にはいちばんきつい理由になる
「スーパーの仕事はアルバイトでもできる簡単な仕事、だからスーパーで働いているとスキルが身に着かない」
本当でしょうか?
④スーパーを辞めたい理由 スキルが身に付かない
「アルバイトが休んで、なんで正社員がアルバイトの仕事をしなくちゃいけないんだ」
「こんな、仕事といえないような作業をし続けて、将来大丈夫なのかな?」
スーパーはその業種の特性上、「誰でも同じように簡単に作業ができる」ということを考えてマニュアルが作成されています。
でないと、専門的な教育を受けた人しかできなければ、人件費が高くついて「ローコスト経営」なんて到底できません。
でも、現場での作業を続ける限り、そのスーパーの現場でのスキルは身に着きますが、それ以上のスキルを身に着けることはできません。
スーパーに入社して半数以上の人は「売場チーフ」までで定年を迎えます。
ということは現場スキルまでしか身に着かないということ。
しかもそのスキルはそのスーパーだけのローカルスキルであって、他の業種ではほとんど使い物にならないだけでなく、同業種でも「経験者優遇」にとどまってしまうようなものなのです。
では、店長はどうかというと「マネジメント」や商圏分析の「マーケティング」などもそのスーパーだけで使えるスキル。
外に放り出されても人に威張れるようなスキルは身に着いていません。
だから定年再雇用で給料が大幅に下がっても同じスーパーで働かなければならないのです。
- 転職に有利な普遍的なスキルは身に着かないので、これは「本当」
「スーパーで働いているというと恥ずかしい」
スーパーという職業は社会的地位が低いのでしょうか?
⑤スーパーを辞めたい理由 社会的地位が低い
私が店長の時にあるチーフが「私、辞めたいと思っています」という。理由を尋ねると「小売業って社会的地位が低くて見下されているように思うんです」と言われてショックだったのを思い出します。
「小売業は下に見られている」「小売業は社会的地位が低い」
果たしてそうでしょうか?
江戸時代の身分制度「士農工商」で商人はいちばん身分の低いものとされてきました。
その名残が残っているのかもしれませんが、逆にいちばん力を持っていたのは商人なんですよね。
昭和に入ってある有名な演歌歌手が「お客様は神様です」と言った言葉を一部のお客が間違えて解釈する。
「客は神様なんだから言うことを聞け」「俺は神様だからなんでもできる」
演歌歌手は「お客様を神様と思って真摯に向き合って歌います」と言ったのが本来の趣旨であったのに、歪曲して広まってしまったんです。
スーパーはどうしても地域密着の店舗が多い。
来られるお客さんも近くの常連さんが多い。
だから、ついつい慣れ慣れしくしゃべりかけてくるお客さんも多いし、自分の身内のように偉そうに言ってくる人もいますね。
でも、偉そうに言ってるお客さんもあなたのスーパーが無くなれば困るんですよ?
「そんなにサービス悪かったら、違う店に行くぞ!」と強がってみても、絶対に他の店に行きません。
そんな気があれば、とっくに他の店に行ってます。
あなたの店がいいから買い物に来るし、無くなれば困るのは確かです。
それほど地域のスーパーは社会的インフラとして地域に無ければ困るのです。
ただ、あまりに身近であるがために、そのありがたみが分からないんです。
自分の家族みたいですよね。
スーパーに勤めていれば「住宅ローン」も借りれます。
「クレジットカード」も好きなだけ作れます。
これがフリーランスだったらお金なんて貸してくれません。
店長にでもなればその地域の自治会長とも話もしますし、地域いちばんの大型店の店長にもなれば市の活性化会議で意見を求められることもあります。
スーパーは決して「社会的地位が低い」ということはありません。
- 「社会的地位が低い」というのは「ウソ」
スーパーの仕事を見ると、立ちっぱなしでキツそうですよね。
次は本当に、肉体的にキツいのかを解説します。
⑥スーパーを辞めたい理由 肉体的にきつい仕事
「スーパーは一日立ち仕事で疲れる」「重い荷物を上げ下ろしできつい」
これは本当ですね。
休みの項目でも説明しましたが、スーパーの5勤はきついです。
だから連休にせずに「3勤 1休 2勤 1休」というシフトになります。
現役を退いた私でも一日に「1万2千歩~1万5千歩」を今でも歩きます。
また、重たい荷物の上げ下ろしと積み込み。
ペットボトルのケースなんて15㎏あります。それを夏場なんて100ケースくらいをひとりで出すのですから。
スーパーに女性の店長が少ないのはなぜかわかりますか?
結婚、出産で退職されるのもありますが、この肉体的にきついのもあります。
女性がスーパーの売場を経験する際にネックになるのが、この荷物の重さです。
気になる方はこの記事をチエックして下さいね。
- 体力的にきついのは「本当」
スーパーの店長って、長時間で大変そう。
証紙を見ていると向上心が湧いてこないのは本当でしょうか?
⑦スーパーを辞めたい理由 上司を見ると向上心が湧かない
店長や副店長を見てると「毎日出てきてるけど休んでるの?」「いつも、つらそうだけど大丈夫?」「将来、あんな風になりたくないな」
上司を見ていると将来が不安。昇進してもあれでは昇進しないほうがマシ。
そう考えている方は多いと思います。
私もチーフの時はそうでしたね。
「なんで休みに出てくるの?」「どうして早く帰らないのかな?」
確かに10年以上前に私が店長になった時も休めませんでした。
店舗の正社員は私を含めて4人。
シフト制ですから、一日は2人体制。
当然、店長は朝から閉店まで。朝7時から夜の10時までの15時間勤務。
残業も150時間。残業手当は一切付かない。
でも、ここ数年過労死が大きな社会問題になり、会社もあわてて人員補充をしてきました。
だから、今は店長でも8時から18時拘束で実働は9時間程度。
休みもしっかり休んでいます。
だから、かなり待遇は改善されました。
給料は店長になれば700万円は超えてきますのでそれなりに高いと思います。
結局は本人次第ですね。
自分が「長時間労働がしたくない」「休みに出てきたくない」と思うのならそうすればいいんです。
別に店長や副店長がいなくても店は勝手に動きます。
自分は自分で理想の上司像を目指せばいいんです。
それで、その会社からの評価が下がるのなら、そんな会社に未来はありません。
さっさとおサラバすればいいと思いますね。
- 上司を見ると向上心が湧かないは「ウソ」 これは自分次第
スーパーというとクレームが多い印象。
クレームで辞めたいと思うのは本当なの?
⑧スーパーを辞めたい理由 クレームが多い
「今日もお客さんに文句言われたよ」「あの客、いつも偉そうに言ってくる」
そんな経験は少なからずありますよね。
でも、一般社員やチーフレベルのクレームなんて大したことではありません。
ほとんどが「態度が悪い」「商品に髪の毛が入ってた」「商品の値段が違う」
こんなところでしょうか?
仮に自分で処理できなくても最終的には店長が処理してくれます。
でも店長となるとそうはいきません。
全てのクレームは店の長である店長に来ます。
「店長を出せ!」とおじさんが叫ぶのは日常茶飯事。
中には常識で考えられないようなクレームも対応しないといけません。
詳細は自著「店長は見た! スーパーに潜む魔物たち」に詳しく書いていますので、興味のある方はお読みいただきたい。
とにかく店長になるとクレーム対応は大変。
よほど受け流すことができるか、強いメンタルを持つことを求められます。
これはかなりつらい。
- クレームが多い これは「本当」 特に店長になるとメンタルをやられる
スーパーって多くの人が働いているけど、人間関係はどうなんだろう?
⑨スーパーを辞めたい理由 人間関係が大変
「惣菜売場 またパートさん同士がもめてるよ」「店長、パワハラで言われたらしいよ」
そんな会話を聞くたびに「スーパーって人間関係が難しい」と思いますよね。
でも、人間関係が難しいのはスーパーだけではありません。
どこに行っても人間が二人以上集まればもめます。
チーフになってパートさん同士がもめて、あなたに話に来たら話を聞いてあげて親身になって相槌を打ちます。
それだけでいいです。
チーフは自分の嫁さんと姑の間に立つ旦那さんみたいなものです。
どちらかの味方をするともめ事は大きくなります。
静かに話を聞いてうなずきましょう。
次にあなた自身の上司と部下との人間関係ですが、これは時間限定ですので問題ありません。
スーパーはチーフ以下で長くて3年、店長クラスで2年ごとに人事異動で店を変わります。
だから、嫌な上司や嫌な部下とも早ければ1年、長くても2年我慢するだけです。
スーパーで転勤が多いことのメリットのひとつはこれですね。
- 人間関係が煩わしいのはどの会社でも同じ 逆にスーパーは転勤が多いので有利 ということで「ウソ」
スーパーって営業時間が長いから、長時間労働になるんじゃないの?
⑩スーパーを辞めたい理由 拘束時間が長い
「スーパーって人手不足だから帰れない」「仕事が終わらなくて残業が多い」
昔は確かに長かった。
でも今は「働き方改革」でかなり短くなっています。
一般社員で残業は多くても月に5時間ほど。
チーフで10~20時間。
問題は生鮮の「水産」と「惣菜」。
この売場は朝から売場に並べる商品を一から作らないといけないので、早ければ朝の7時。遅くとも朝の8時には出勤しないと間に合いません。
だから残業も月に30~40時間と多くなります。
それでも昔に比べると早く帰っても咎められることはないし、逆に残っていると早く帰れと言われるので、帰りやすい環境であるのは間違いないです。
- 最近は早く帰れるので「ウソ」
いかがでしたか?
本当のこともあれば、違っていることもあります。
さて、結論です。
スーパーを辞めたい理由10選 結論
スーパーを辞めたい理由 | 本当? ウソ? |
---|---|
①スーパーを辞めたい理由 給料が安い | ウソ |
②スーパーを辞めたい理由 人手不足で仕事が多い | 本当50% ウソ50% |
③スーパーを辞めたい理由 人が休む時に休めない | 本当 |
④スーパーを辞めたい理由 スキルが身に付かない | 本当 |
⑤スーパーを辞めたい理由 社会的地位が低い | ウソ |
⑥スーパーを辞めたい理由 肉体的にきつい仕事 | 本当 |
⑦スーパーを辞めたい理由 上司を見ると向上心が湧かない | ウソ |
⑧スーパーを辞めたい理由 クレームが多い | 本当 |
⑨スーパーを辞めたい理由 人間関係が大変 | ウソ |
⑩スーパーを辞めたい理由 拘束時間が長い | ウソ |
結論は、本当が55% ウソが45%程度ですかね。
ただ、これはあくまで私の勤めているスーパーのことですので、ご自分のスーパーと照らし合わせて考えていただければ幸いです。
スーパーというのは社会的貢献度が大きく、比較的安定しているので働くのには悪くないですが、つらいことも多い職場です。
38年間、この業界に身を置いてきた私だから分かることがあります。
ご自分の一生のことですから悔いのない選択をしてください。
ありがとうございました。